堀内です。

ちゃんと続きました。二回目です。

今回の音は「チーン」にしようと思います。さすがにこれで分かる人はいないでしょうから勿体ぶらずに答えを書くとDiabloの『リングが落ちた音』です。

Diabloというゲームをご存じない方(…いるのか?)に一応簡単に補足しておきますと、ハックアンドスラッシュタイプの草分け的存在として語り継がれるトップビュー型のアクションRPGの"超"名作です。

そもそもこのゲームの開発元であるBlizzard社が手がける作品は、どれもサウンド系全般のクオリティがとても高く、記憶に残るイイ音に溢れまくっております。(Matt Uelman による名曲の数々はいまでもポータブルプレイヤーでの再生回数上位に鎮座してます)そんな中、この「チーン」がなぜココに書く音として選ばれたのかをツラツラと書いていこうかと。

Diabloというゲームにおいて、様々な特殊効果を持つリングは、そもそもなかなか出現しない「落ちると嬉しいアイテム」でありながら、やたらとちっこくて何処に落ちたか視認しにくいという難儀な特徴をもっています。(もっとも、Diablo2になってからAltキーを押すと落ちているアイテムが簡単にわかってしまうので初代Diablo限定のお話)

なのでプレイヤーは、リングが落ちる「チーン」という音を頼りに薄暗いダンジョンを探索することになるのですが、なによりこの音が優れているのは、"敵に囲まれた混戦状況で様々な効果音が鳴りまくっている中、確実に聞き取れる"という点です。

ざしゅざしゅざしゅ、ぶぉお、しゅしゅるるるぱさっ、ざっ、ざっ、ぶぉっ、ぶぉっ、ぶるぉおおお! "チーン" ざっ、ざっ、ざしゅざしゅ、うぼぁあ、こぽこぽ、こぽこぽ

…と、途中に挟み込まれているリングの落下音が鳴った瞬間、プレイヤは『あ、落ちたな』と一見冷静な面持ちで、内心『効果の程は…』とワクワクした気持ちを抑えながら、戦闘が一段落した刹那、マウスを高速で走らせ、画面中を舐め回してリングを血眼になって探す、という光景が当時は世界中でみることができました。たぶん。

この"どんなときでも埋もれず、聞き取れる"という事に、音楽を多少カジッていた自分は、ゲームの効果音におけるミキシング的な考え方の重要さに気がついてしまったのです。雷が我が身を貫いたがごとき衝撃を受け、三日三晩全身の震えが止まらなかったという瞬間的な驚きではなく、やればやるほど…ジンワリ…ジンワ~リ…と遠赤外ヒーターのように「あ、これ、実はすごい」と染みいった具合です。

音というのは波ですので、波どうしの干渉によって互いに打ち消し合うような効果を生み出す場合があり、この効果を狙って使用しているのがノイズキャンセリングヘッドフォン、狙って分離してるのがミキシングと呼ばれる工程だったりします。(我ながら凄まじく乱暴な書き方だなぁと思っちゃったりしますが、この場で細かい説明をするのはご勘弁)

ずばり、この「チーン」はその意味で"どんなときでも埋もれず、聞き取れる"ように調整されているのデス!たぶん。

また、ゲームにおいては音色等による聴きわけやすさ以外にも、ゲームルール的、ハードウェア的、ソフトウェア的な優先度のコントロールが必要です。ゲームの効果音は世界の雰囲気作りだけでなく、Diabloのリングのような『プレイヤーにとって重要な情報』を補助する役割も担っています。然しながら、ハードウェアやソフトウェアの都合上、同時にならすことができる音の上限が設定されることが大半です。すべての音が同列に扱われていると、重要な効果音を鳴らそうとした時に再生されている音数が既に上限に達してしまって大問題になることがあります。はい…はい…経験あります。

なのでゲームを設計する際には「この音は何が何でも絶対鳴らす」「余裕があったら鳴らすけど、余裕がなくなったら再生止める」とか音毎に設定しなければなりません。基礎の基礎ですが。

Diabloプレイヤーにとって、この「チーン」は、絶対に鳴り、かつ聞こえなければならないわけで、開発者たる者、そこをちゃんと理解して、調整しなければならない…ということに若かりしワタクシに気付きを与えてくれた聖なる音なのです。

そしてその優れた音は、確かに当時のプレイヤーの脳内で『暗い闇に覆われた陰湿なダンジョンの中、怪しくヌメリと金属質なきらめきを放つ小さな指輪」として変換され、昨今のものすごい時間と手間をかけて作られた高密度で美しいビジュアルの3DCGより、ある意味でより実感を伴うリアルな記憶として埋め込まれるわけです…

「そんなの思い出補正じゃん!!」という罵詈雑言を全方位から食らいつつも、さらに続きます。たぶん。