堀内です。

 今日は、キャラクタの動きを制作する流れについて書いてみます。といってもバトルアクションに関してはモーションデザイナーの梅田にほぼ一任してますので、自分が管理をしていたイベント系について、デス。

 剣闘士 グラディエータービギンズのイベントシーンは

1:画面上に腰から上が映された人物がこちらを向いて会話する「バストアップイベント」
2:キャラクタの演技をカメラを動かしつつ魅せる「カットシーン」

の二種類に大別されます。

 バストアップイベントの場合は、キャラクタの人物像をシナリオを読みながら固めていき「こいつは、こんな動きをしながらしゃべりそうだな~」とか考えつつ、最低限必要な動きを洗い出して、何人かのイベント担当モーションデザイナーと共に制作していきました。

 以下は開発初期に作ったテスト動画です。



 まだキャラクタのグラフィックスデータが全然なかった時期なので奴隷モデルを用いてテストしています。こういったものを作って、1つのアクションの長さ、人物が表示される大きさ、表情の程度や骨の数等々、「こんな感じならプロジェクトの範囲内で作っていけるかな?」と検証していきました。

 次にカットシーンですが、今回はかなりスピードを要求されましたので絵コンテは殆ど描きませんでした。3Dソフト上でアニマティックとよばれる簡易動画コンテをガッとつくったり、細かい演技部分は自分たちで動いた動画を撮ったりして、「こんな感じで作りこんで~」と制作担当にお願いしていました(開発末期は「こんな感じ!」と動きながら口でいうのみという感じでしたけど…担当者の皆さん、ごめんなさい)。

 アニマティックの一例はこちら。
 最後までプレイした人なら「あ、あのシーンだ」とわかりますね。



 こんな感じで最初にキャラクタの立ち位置&演技の概要、そしてカメラを決めておくことで、作り込む人が「ここはばっちり見えるな」とか「このカットは脚が見えないからザックリでいいな」と力の入れどころを把握できます(作り込んでいく段階で「こっちのほうがつくりやすい」とか「このほうがもっと映える」とかの理由から変更する事はあります)。

 次に演技動画です。キャラメイク後の演出です。



 これは一人二役でやってます。はたからみれば「ぷぷ…なにやってんの?」って感じでしょうが、演っている本人は「こいつならどう動くかな」「こういうときはこんな気持かな」とか真剣に考え羞恥心を捨てて動きます。ちなみに私は以前所属していた会社で犬の動きを把握するために四つん這いになって遠吠えをしている人を見たことがあります。これが本当のプロってもんです。

 同じようによく自分で動いてみるスタッフとは、「やっぱ体格がよくないと、"体格がいい動き"にはならんね~」とボヤいています。普段マウスをカチカチやっている程度では、鍛えている剣士の動きにならないんです。ですが、力の伝達具合とか、まあ、動かないとわからないことだらけなので、やっぱり動きます。あとは実際にデータを作成するときに想像力による補完で「もっと体重のある筋肉質な動き」等、足りない部分を補っていくしかありません。ここが各人の腕の見せ所ともいえます。

 ここまで読んで「モーションキャプチャすればいいじゃん」と思われるかもしれませんが、それはそれでむずかしいのです。まず、いい役者さんを見つけないといけないし、限られた時間内に望んだ動きが収録できるようこちらの意図を言語化し、理解してもらわないといけないし、収録がうまくいっても、それを実際ゲーム中に使えるように手を加える必要が…いや、そもそもスタジオを抑える費用(略

 うん、手で作れる方が、いざってときに融通が利きますよ。やっぱり。はい。

 ともかく、私は個人的にも「動き」「タイミング」「感触」というものにとても興味がある人間なのです。そこをもっともっと追求できるようなプロジェクトをいつか立ち上げたいと考えています。それを目標に今後も進んでいきたいです。

 ちなみに今作で、自分が好きなイベントの動きを一つあげるならば“カシウスが画面を指差す動き”デス。あれ、イラッときません?イラッとしてもらえたなら成功です。