アートディレクターの相田です。こんにちは。

 ビジュアル全般の方向性とクオリティの管理、グラフィックデザイン(2D)を主に担当しています。構成要素に対して直接的にも間接的にも関係しているため話題は多々あるのですが、順当に大枠から参ります。

 PSP『剣闘士』では貴族や議員といったパトロン(後援者)の登場が、前作PS2『グラディエーター RtF』からの大きな変更点となっています。すでにプレイされた方であればお分かりのように、本作のテーマは華麗な生活を送るパトロンたちとの関わりと、それによる奴隷からの成り上がりです。前作の趣とはまた少し違うため、画作りを進める上ではプラスαの形で、より華やかなゲームビジュアルを目指しました。

 現代と比べて身近に「死」が存在する古代ローマ。晴れやかな青空の下で剣闘士たちは己の未来をつなぐために、飾り立てられたお祭り騒ぎの中、血飛沫を上げながら生死賭けた闘技を演じている…そんなデッド・オア・アライブな世界を演出できればという思いでいっぱいでしたが、ときどきその思いが行き過ぎていたところもあり反省も多々あり。人はそうやって階段を一歩一歩登るように成長していくのですねって何の話でしょうか。

 さて、本作では大幅にマップ要素(キャラクターが移動できる場所)がカットされているのですが、これはゲーム進行のテンポアップを図る目的が主です。しかしシステムにおいては蛇足と思われがちなフインキもとい雰囲気の演出要素は、世界設定の補強やユーザーの没入感を高める上で効果的なものであり、多少ともその点を支えるために、闘技場の控え室、武器屋や医者といったNPCの場をメニューに馴染ませる形で残しつつ、本作を特徴付けるパトロンたちの住居を3Dモデルで用意しました。イラストやプリレンダではなく、3Dモデルであることが重要だったりします。

 ゲーム中ではワールドマップのみで表現される古代都市ローマの存在感や、他文明と比べて格段に優れていた技術水準を、PSPのちっこい画面の中にも感じていただきたい、という思いがあったのですが、史実の再現を目指したわけではありません。現存の資料や絵画などの多くが空想夢想の産物であるという信ぴょう性のなさからも、本作の古代ローマはファンタジーといった方が良いように思います。ラストでファイナルなのです。

 そうそう、ビジュアルを語る上ではHBO&BBC制作のTVドラマ『ROME』の存在を無視できません。日本で手に入る古代ローマ帝国の資料は限られていますから、こういった映像作品の存在は非常にありがたく、特にこのTVドラマのプロップは非常にクオリティが高いため、キャラクターの衣装から背景制作まで多岐にわたり参考になりました。

 未見の方、いらっしゃいますでしょうか?観ないと損ですよ!クレオパトラが只のビッチに描かれていたり、登場人物がいちいち変態嗜好を晒してくれたりと、普通にドラマとして面白い作品ですのでお勧めです(冗談抜きに)。

 それではこのあたりで。