娯ログ(β)

ゲームデベロッパー 娯匠 公式ブログ

November 2011

「便利」という言葉と聞くと、いつも頭の裏側でBen Leeに変換

堀内です。

『GLADIATOR VS』、ついに発売となりました。

公式の『けんとうしブログ』でも書きましたが、なんだかんだで今回も長く本当に大変なプロジェクトだったと思います。他社との本格的な共同開発や、ネットワークゲーム開発の難しさ等々あらゆる問題が身に沁みたプロジェクトでした。手にとっていただいた方が本作なりの面白さを感じて頂けることを祈るばかりです。

さて、今回は「音と錯覚(第三回目)」を予定しておりましたが、内容を変更します。

けっして原稿を落としたわけではありません。えぇ…

今日は「ありがとうセブンイレブン! ありがとうiPhone! ありがとうグーグル! いや、もっと根源的にありがとうインターネット!」という話です。広告ではありません。

便利な世の中になったもんだ! としみじみ実感する出来事が最近あったので、思わず書いてしまおうというわけです。


ある日、私は事務的な用事で会社で書類をプリントアウトして、とある役所(結構遠い)に向かっておりました。

役所の近くまで来て、カバンからゴソゴソと書類をひきだして中身を確認しますとですね、なんか…一枚足りないのですよっ! 重要書類がっっ!(どうやらプリンタが紙をきらして、最後の一枚がでてきてなかったようなのデス)

その瞬間、「今から会社戻ってねぇ、プリントしてねぇ、又ココに戻るっと…役所閉まる時間ギリだねー…ははは(乾)、アホだな~自分…………っていうか………また往復したくねぇええええ!!!」と心のなかで絶叫し、この場で何とかならないかと腰元からiPhoneをサッと取り出し(おそらくダーク・タワーのガンスリンガー、ローランドに匹敵する早抜き)、次の事をしました。

1:
必要なのはGmailに添付されてたPDFだ! それを出先でプリントアウトする手っ取り早い方法は無いんか!? とそれっぽいキーワードでググる

2:
セブンイレブンでUSBメモリなどのメディアでPDFプリントできるサービスがあるらしい…ってUSBメモリに入れてないし! 再度キーワードちょっと変えてググる

3:
同じくセブンイレブンでネットプリントっていうのがあるらしい。iPhoneからなんかできないの? ググる

4:
すげー…専用アプリがあるじゃないか。
http://itunes.apple.com/jp/app/netprint/id372351201?mt=8

5:
普段使いしてるDownloadsというアプリからGmailの添付PDFファイルをダウンロード、iPhoneのメーラー経由でネットプリントに転送!

6:
近場のセブンイレブンをググる。おぉ、直ぐ近くにあるじゃないか。歩く。

7:
店内に設置されてる機器をペチペチと操作し、自分がアップロードしたPDFを選択、プリント!

8:
無事役所に提出。あぁ、なに? この便利さ…現代の日本に生きてて助かった…



以上。そもそもそういう使い方を既に知ってる人や、出先で重要書類を突発的にプリントしたいなんていう必要性に迫られてない人には「は? なに興奮してんの?」っていうことなのかもしれないですけどね。

まあ、その瞬間の自分は、天から光が差し込み、自分の周りを天使が祝福のラッパ吹きながらグルグル回っているような「ぱぁ~~」とした幸せオーラに包まれてしまったのですから、こんな記事を書いてしまったも無理がないわけです。

なんか世の中でいろいろ言われますけど、やっぱり便利っていいな!と思うわけです。便利バンザイ。

音と錯覚(第ニ回)

堀内です。

ちゃんと続きました。二回目です。

今回の音は「チーン」にしようと思います。さすがにこれで分かる人はいないでしょうから勿体ぶらずに答えを書くとDiabloの『リングが落ちた音』です。

Diabloというゲームをご存じない方(…いるのか?)に一応簡単に補足しておきますと、ハックアンドスラッシュタイプの草分け的存在として語り継がれるトップビュー型のアクションRPGの"超"名作です。

そもそもこのゲームの開発元であるBlizzard社が手がける作品は、どれもサウンド系全般のクオリティがとても高く、記憶に残るイイ音に溢れまくっております。(Matt Uelman による名曲の数々はいまでもポータブルプレイヤーでの再生回数上位に鎮座してます)そんな中、この「チーン」がなぜココに書く音として選ばれたのかをツラツラと書いていこうかと。

Diabloというゲームにおいて、様々な特殊効果を持つリングは、そもそもなかなか出現しない「落ちると嬉しいアイテム」でありながら、やたらとちっこくて何処に落ちたか視認しにくいという難儀な特徴をもっています。(もっとも、Diablo2になってからAltキーを押すと落ちているアイテムが簡単にわかってしまうので初代Diablo限定のお話)

なのでプレイヤーは、リングが落ちる「チーン」という音を頼りに薄暗いダンジョンを探索することになるのですが、なによりこの音が優れているのは、"敵に囲まれた混戦状況で様々な効果音が鳴りまくっている中、確実に聞き取れる"という点です。

ざしゅざしゅざしゅ、ぶぉお、しゅしゅるるるぱさっ、ざっ、ざっ、ぶぉっ、ぶぉっ、ぶるぉおおお! "チーン" ざっ、ざっ、ざしゅざしゅ、うぼぁあ、こぽこぽ、こぽこぽ

…と、途中に挟み込まれているリングの落下音が鳴った瞬間、プレイヤは『あ、落ちたな』と一見冷静な面持ちで、内心『効果の程は…』とワクワクした気持ちを抑えながら、戦闘が一段落した刹那、マウスを高速で走らせ、画面中を舐め回してリングを血眼になって探す、という光景が当時は世界中でみることができました。たぶん。

この"どんなときでも埋もれず、聞き取れる"という事に、音楽を多少カジッていた自分は、ゲームの効果音におけるミキシング的な考え方の重要さに気がついてしまったのです。雷が我が身を貫いたがごとき衝撃を受け、三日三晩全身の震えが止まらなかったという瞬間的な驚きではなく、やればやるほど…ジンワリ…ジンワ~リ…と遠赤外ヒーターのように「あ、これ、実はすごい」と染みいった具合です。

音というのは波ですので、波どうしの干渉によって互いに打ち消し合うような効果を生み出す場合があり、この効果を狙って使用しているのがノイズキャンセリングヘッドフォン、狙って分離してるのがミキシングと呼ばれる工程だったりします。(我ながら凄まじく乱暴な書き方だなぁと思っちゃったりしますが、この場で細かい説明をするのはご勘弁)

ずばり、この「チーン」はその意味で"どんなときでも埋もれず、聞き取れる"ように調整されているのデス!たぶん。

また、ゲームにおいては音色等による聴きわけやすさ以外にも、ゲームルール的、ハードウェア的、ソフトウェア的な優先度のコントロールが必要です。ゲームの効果音は世界の雰囲気作りだけでなく、Diabloのリングのような『プレイヤーにとって重要な情報』を補助する役割も担っています。然しながら、ハードウェアやソフトウェアの都合上、同時にならすことができる音の上限が設定されることが大半です。すべての音が同列に扱われていると、重要な効果音を鳴らそうとした時に再生されている音数が既に上限に達してしまって大問題になることがあります。はい…はい…経験あります。

なのでゲームを設計する際には「この音は何が何でも絶対鳴らす」「余裕があったら鳴らすけど、余裕がなくなったら再生止める」とか音毎に設定しなければなりません。基礎の基礎ですが。

Diabloプレイヤーにとって、この「チーン」は、絶対に鳴り、かつ聞こえなければならないわけで、開発者たる者、そこをちゃんと理解して、調整しなければならない…ということに若かりしワタクシに気付きを与えてくれた聖なる音なのです。

そしてその優れた音は、確かに当時のプレイヤーの脳内で『暗い闇に覆われた陰湿なダンジョンの中、怪しくヌメリと金属質なきらめきを放つ小さな指輪」として変換され、昨今のものすごい時間と手間をかけて作られた高密度で美しいビジュアルの3DCGより、ある意味でより実感を伴うリアルな記憶として埋め込まれるわけです…

「そんなの思い出補正じゃん!!」という罵詈雑言を全方位から食らいつつも、さらに続きます。たぶん。

音と錯覚(第一回)

堀内です。

表題に第一回とかいてありますが、何回まで続くか不明です。

突然ですが、ビデオゲームの思い出話をするときに、「あのステージのあの曲がサイコー」とかいう話題はわりと耳にしますが、「あの効果音サイコー」っていう話題はそうは聞かない気がします。どうでしょう?

そんなわけでマイナーな開発会社の代表である自分は「あの効果音サイコー」っていう話をわざわざ掘り下げてみたいと思います。

がきんちょの頃の記憶で、いわゆる"音真似"をするくらいインパクトがあったのは、ご多分に漏れずスター・ウォーズの「コー…パー…」とか「ヴシュゥウウン…ヴウウウウン」とか「ンァアアオオ」とかぐらいじゃないかなぁと思います。スター・ウォーズ、偉大ですね。ちなみに前からベイダー卿の呼吸音、ライトセイバー起動音と振る音、ウーキー です。まあ、あとは「ドカッ」「バキッ」とか「ズキューーン」とか、それはもう極々一般的な感覚で生きていました。ちなみに前から打撃音1、打撃音2、銃の発射音 です。

あ、でも今思えば、発砲音の「ズキューーン」は中学前後でプラトーンとか観てから「タタタン キキン、キン(三点バーストから排莢の落下)」という乾いたリアル路線に切り替わり、日本のドラマの発砲音はオカシイ!とか息巻いてたりもしますので、その頃から今の方向性がほぼ定まっているような気もしますが、話がずれるのでそれは置いといて…

まぁまぁ、上記程度であれば"誰しも通る道"といっても過言ではない!とか断言してしまいますが、ビデオゲームでスター・ウォーズ級のインパクトを与えてくれた音…となると、それほど一般的な感覚ではなくなるんじゃないかなーと思ったり。以後の話題で「あるある」といってくれる人とは旨い酒が飲めそうです。(※注:イメージです。自分は酒が飲めません故)

では、そんなビデオゲームで脳に焼き付くインパクトを与えてくれた効果音シリーズ、栄えある第一回目は「ガイーン!」にしたいと思います。

これでわかった人とは旨い酒(略

答えは、バーチャファイターのカウンターとか大ダウン攻撃とか痛い系のヒット音です。(超メジャー級なので「あるある」といってくれる人はわりと多いですかね?)

当時、この「ガイーン!」という音には本当にショックをうけました。いや、だってバーチャファイターって「3DCGでつくられた立体的なキャラクターがリアルな動きで戦う」というコンセプトだと思うわけですよ。でも、生身の人間の体に当たった音が「ガイーン!」ですよ。カッチカチですよ。これは普通の発想じゃでてこないですよ。

でも「リアル」といっておきながら初期3DCG故にソリッドなモデルとなっており、そこから醸しだされる当時の圧倒的な未来感とでもいいましょうか、そんなものとうまくマッチしたから、よりいっそうあの音が"良い意味での違和感"として機能し、耳に残ったのだと思います。

とくにサラステージの地面から上方向への照明と、この「ガイーン!」の相性は、冬の鍋の汁で作ったおじやにちょっとかぼす絞るかの如き絶妙な組合せで、恐ろしく美味な仕上がりとなっておるわけです。

この音が自分の中でゲーム効果音における「アヒルの子が最初に見た物を親と思う」的な位置付けとなり、自社の開発でも効果音の担当者に「こういう"違和感"のある痛い音がほしいんデス!」と伝えたりしました。ここに白状するとロストレグナムのカウンター音はその影響が顕著かと思います。

で、さっきから "痛い"音 とか書いてますが、音なので実際痛いわけは無いんです。しかし、そうと錯覚させるマジックがココにはある!と自分はこの時発見してしまいました。以後、自分がこの感覚に取り憑かれることを、まだ知る由もなかった…

というヒキで次回に続きます。

iOS de Game

堀内です。

『グラディエーターバーサス』の発売が11月23日に迫っており、緊張してきました。

といっても公式のほうにもブログがありますので、バーサスについてはそちらに集約するとして、今日はiOS上のゲームアプリについて書いてみたいと思います(※Androidは個人的に詳しくないのでここでは触れません!)。

皆さん、iOSでゲームやってますか?
(娯匠のブログを読まれる方との結びつきは薄いかもしれませんが…)

自分は結構前からiPhone3GS(まだ4Sではない!)持ちなのですが、今や電車移動中は純粋なるゲーム機として重宝してます。

一時はPSPやDSと併用してたのですが、充電管理の面倒さ、荷物としての重さ、両手で持たなければならない構造…等々の理由から気がついたら「携帯ゲーム機」としての役割がiPhoneに一本化されてしまいました。いや、もちろん"研究"という意味合いではPSP、DS系のゲームも触りますよ。ただ、イチユーザーとしてはiOSのゲームアプリにドップリという状態です。

優れてるなぁと思うポイントは…

1:買いやすさ
まずはなんといってもコレでしょう。いつでもどこでもポチってすぐに遊べます。しかも85円とか…ジュース買うより安いです。価格破壊以外のなにものでもありません。高くても1000円以下が大半です。"ゲームを購入する"ことに対する金銭感覚が狂います。

2:チャレンジング
家庭用ゲーム市場はパッケージ販売の宿命でもあるとは思うのですが、開発~販売のコストがどうしても割高になるので、売上が見込める続編などの保守的なタイトルが増えてきているのは否めません。iOSのゲームアプリはというと、グラフィックや演出等の質は劣るかも知れませんが、開発~販売の敷居が低いため、インディー系のゲーム開発者たちが、怖いもの知らずでノリノリだったりします。

3:手軽さ
社会人になって「ゲームをするための時間と場所を確保するのが難しくなる」というのはありがちな話です。そもそも携帯ゲーム機は「家から持ち出して移動中もゲームができる!」コンセプトなわけですが、最近は携帯ゲーム機も据置機と同じ手法で「がっつりじっくり遊ぶ」ものが多い印象です。iOSのゲームアプリは本当の意味で「手軽、気軽に遊べるもの」が大量に存在しており、5分程度のちょっとした移動時間とかでもサクッと遊べて、今の自分の生活スタイルにマッチしています。

1だけでゲームがつまらなければ"安かろう悪かろう"なのですが、そこに2,3の組合せでびっくりするような出会いがたまにあり、それがまた安かったりすると…「く、悔しい」と正直凹みます。

インターフェースがタッチなのでゲーム専用機のボタン入力には到底敵わないという問題がありますが、そこは「無理やり慣れる」というのと「タッチ操作に特化して設計されたゲームを選ぶ」という2パターンで克服しました。後者の場合、逆に既存のボタン入力のゲーム敵わない場面もあったりします。

iPhone触り始めた頃は、「ゲームはやっぱりショボイなぁ」なんて思ってましたが、それは良アプリとの出会いが足りてなかったということと、"価格から得られる面白さのバランス"とでもいいましょうか、費用対効果についての感覚が定まってなかったからで、付き合い方が定着したらとても魅力があるモノでした。

長々とかきましたが、何が言いたいかというと「この刺激的な場所で我々も何かできないかなぁ」と考えたりするわけです。いつの日かこの場で発表できる「何か」に向かって一歩踏み出そうと思います。
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