娯ログ(β)

ゲームデベロッパー 娯匠 公式ブログ

May 2010

マグロ二刀流

 モーションデザイナーのKamuです。

 『剣闘士』のイベント関連モーションはいかがでしたでしょうか?みんなスキップとかしてません?たまには観てあげてくださいね。

 発売後にパッチで追加になった「ウルスス」の入場シーン。実は制作中に「こんなかんじ?」「こんなかんじ?」と頭をひねりながら作りましたが、その途中、社長自らあのポーズをしてくださいました。真面目にあのポーズをして「こうですか?」とモーション監修を受けながら作るゲーム開発の風景なんて、普通だったら笑えますよね。でも真剣なんです。常に真剣な顔で「ウルススの入場」や「ホリエスの入場」を作ってきました。

 作っている間はそのキャラクター専用として作っているので、いざ製品が発売され、皆さんがいろいろなキャラクターや武具でオリジナリティを出しつつ、さらにあのウルスス入場モーションが再生されていたりすると、作り手側にも新しい発見が!

 まさかあんなに!

 マグロ二刀流と!

 相性がいいとは!!


 ちなみに私は最近「頭:壷」「右手:壷」「左手:壷」の壷戦士でも作ろうかと思っています。パッシブはもちろんホリエスの予定。開発者だってウケ狙いに走りますよー。

モーション力

 モーションデザイナーの梅田です。

 バトルモーション全般とイベント(グリエルムス関係や処刑まわり)を担当しました。Twitterの方でボツ技の話をしてしまっているので、こちらでは“技のデザイン”について書いてみようと思います。

 まず方向性ですが、題材が剣闘士ですので、いわゆる演舞のような見栄えのする技はなるべく控えるようにしています。一部の有名剣闘士やスキルで派手な動きをさせていますが、基本的には「自分ならこの装備でどう攻撃するか?」ということを考えながら、実際に身体を動かして技を考えています。ただリアルに寄りすぎるとグダグダになってしまうので、技を出したときの感触を優先して今のバランスに落ちつかせています。

 実際に身体を動かして技を考えると言っても、全くのゼロから生み出すのは難しいので…映画では『グラディエーター』、『トロイ』、『スパルタカス』、『ラストグラディエーター』、『300[スリーハンドレッド]』、ドラマでは『スパルタカス(*旧作)』、『ROME』といった作品から動きの解釈を拾っています。

 特に今作ではTVドラマ『ROME』がかなり参考になりました。TVドラマと侮っていたのですが戦闘シーンの出来はかなり良く、また役者さんの“死に演技”も非常に素晴らしいので、モーションデザイナーの私からもお勧めしておきます。

 余談ですが今年の7月から『Spartacus- Blood and Sand』(邦題:スパルタカス)という新作ドラマが放送されるそうですよ。制作にはサム・ライミが名を連ねています。

 それと前作PS2『グラディエーター RtF』のときから比べると、動画共有サイトで剣闘士関連動画を多く見つけることができるようになったのですが、おそらく観光客向けにやってるショーだと思われるのですけど、中には「なぜにそこまで…」と思ってしまうほどガチ指数の高いものがあったりします。

 個人的に気に入っているのが以下です。これを観るとプランナー前野が記事で夢語っていた「装備の押し合い」がやりたくなってきます。



 こうして出来上がった技ですが、“コリジョン”が大きく影響を与えるゲームであるため、技の性能は実際に触ってみないと分からなかったりします。予想よりも弱かったり、または強かったり、でもその原因が未だに謎めいた技がけっこう存在していまして、社内では「何故か潰されにくい」とか「何故か抜ける」といったよくわからない強さを持った技のことを“モーション力の高い技”と呼んでいたりします。

 長くなりましたので、今回はこの辺りで。ではまた。

ローマに吠えろ

 アートディレクターの相田です。こんにちは。

 ビジュアル全般の方向性とクオリティの管理、グラフィックデザイン(2D)を主に担当しています。構成要素に対して直接的にも間接的にも関係しているため話題は多々あるのですが、順当に大枠から参ります。

 PSP『剣闘士』では貴族や議員といったパトロン(後援者)の登場が、前作PS2『グラディエーター RtF』からの大きな変更点となっています。すでにプレイされた方であればお分かりのように、本作のテーマは華麗な生活を送るパトロンたちとの関わりと、それによる奴隷からの成り上がりです。前作の趣とはまた少し違うため、画作りを進める上ではプラスαの形で、より華やかなゲームビジュアルを目指しました。

 現代と比べて身近に「死」が存在する古代ローマ。晴れやかな青空の下で剣闘士たちは己の未来をつなぐために、飾り立てられたお祭り騒ぎの中、血飛沫を上げながら生死賭けた闘技を演じている…そんなデッド・オア・アライブな世界を演出できればという思いでいっぱいでしたが、ときどきその思いが行き過ぎていたところもあり反省も多々あり。人はそうやって階段を一歩一歩登るように成長していくのですねって何の話でしょうか。

 さて、本作では大幅にマップ要素(キャラクターが移動できる場所)がカットされているのですが、これはゲーム進行のテンポアップを図る目的が主です。しかしシステムにおいては蛇足と思われがちなフインキもとい雰囲気の演出要素は、世界設定の補強やユーザーの没入感を高める上で効果的なものであり、多少ともその点を支えるために、闘技場の控え室、武器屋や医者といったNPCの場をメニューに馴染ませる形で残しつつ、本作を特徴付けるパトロンたちの住居を3Dモデルで用意しました。イラストやプリレンダではなく、3Dモデルであることが重要だったりします。

 ゲーム中ではワールドマップのみで表現される古代都市ローマの存在感や、他文明と比べて格段に優れていた技術水準を、PSPのちっこい画面の中にも感じていただきたい、という思いがあったのですが、史実の再現を目指したわけではありません。現存の資料や絵画などの多くが空想夢想の産物であるという信ぴょう性のなさからも、本作の古代ローマはファンタジーといった方が良いように思います。ラストでファイナルなのです。

 そうそう、ビジュアルを語る上ではHBO&BBC制作のTVドラマ『ROME』の存在を無視できません。日本で手に入る古代ローマ帝国の資料は限られていますから、こういった映像作品の存在は非常にありがたく、特にこのTVドラマのプロップは非常にクオリティが高いため、キャラクターの衣装から背景制作まで多岐にわたり参考になりました。

 未見の方、いらっしゃいますでしょうか?観ないと損ですよ!クレオパトラが只のビッチに描かれていたり、登場人物がいちいち変態嗜好を晒してくれたりと、普通にドラマとして面白い作品ですのでお勧めです(冗談抜きに)。

 それではこのあたりで。

AIの攻め方

 プランナー兼プログラマーの石川です。

 前回の記事へ頂いたコメントに長々とお返事を書いていたら、コメント欄に載せるには長すぎる文章になってしまったため、新たに記事に起こしました。

 まずはご質問に対する返答から。

 AIの攻め方にどんな傾向があるのかというご質問でしたが、特定のスキルを多用したり、通り名によって何かが変化するような調整はしていません。ただしスキルやスタイル、そして装備している武器に影響されて戦い方が変わるようになっています。もし特定の敵AIが特定のスキルを多用してくるように見えたとしたら、間合いの取り方がいつも同じになっている可能性があります。

 というのも、AIは武器の長さとスキルの移動距離を合わせた範囲の中で、ターゲットに届く攻撃を適当に散らしながら撃っているため、間合いが遠すぎたり近すぎたりすると、AIが「これは届く」と判断する攻撃が1つしかない場合があるからです。逆に言うと、間合いの調整をうまくやると、AIの行動を制限できる場合がありますので、どうしても勝てない場合は距離をとってみたり、思いっきり接近してみたりして下さい。

 また、通り名にそった戦い方をしているように見えたとしたら、そもそも装備しているスキルや武器が、通り名に合わせたものになっているからだと思われます。そのあたりはバトル担当、前野の調整なので、うまくいっているようでしたら褒めてあげてください。

 そしてご質問にはありませんでしたが、もう1つ特徴的な機能として、ラッシュモードというものがあります。これはバトル中のあるタイミングで、AIが全力でラッシュをかけてくる状態になる機能です。

 前作『Gladiator RtF Remix』では、敵専用の「何もしないフェイントモーション」というもので攻撃間隔を調整していましたが、PSP用ソフトである『剣闘士』ではメモリの問題もあり、フェイントモーションを入れられませんでした。そのため、普段の攻撃は比較的長い間隔で単発攻撃を繰り返し、ラッシュモードに入った時にスタミナゲージが空になる勢いで攻撃してくる、というような設計にしました。

 また、ラッシュモード中は攻撃重視、そうでない時は防御重視になるように調整されていますので、高難易度のAIに勝てない場合は、敵がラッシュモード中だと思ったらドッジやパリーなどの切り返しからの攻撃を狙い、そうでないときはこちらからラッシュをかけて相手を後手に回らせるという戦い方が有効です。

 対戦会での様子や実況動画を拝見させて頂いていると、敵が攻撃してくるまでひたすらじっとしている方が結構いらっしゃいますが、『剣闘士』ではドッジ&パリーを行うとスタミナの回復が止まるため、こちらから積極的に攻めて回避行動をとらせた方が、敵のスタミナ回復が遅くなるため、案外楽に戦えます。逆に攻撃してくるまでじっと待っていると、敵のスタミナが全快してしまい、またきついラッシュに耐えなければならなくなるわけです。

 たまに敵のスタミナが無限だと誤解されている方がいらっしゃいますが、上記のような仕組みでスタミナ管理などもしていますので、敵のスタミナゲージを想像しながら戦うと、また違った展開が楽しめるのではないでしょうか。

 ではこの辺で。コメントありがとうございました。

盾をすり抜けるスキル

 社長の堀内です。

> 格闘スタイルで盾をすり抜けるスキルは一体何があるのだろう。
> スティングもソバットも抜ける時は抜けるけど安定しない・・・

 という疑問をTwitterにて目にしましたので、今回はちょっとその点について書いてみたいと思います。

 『剣闘士グラディエータービギンズ(以下剣闘士GB)』は社内でも"コリジョンゲー"と形容したりするほど、"コリジョン"の状況が戦闘に多くの影響をあたえるゲームです。

 ここでいう"コリジョン"とは、ゲーム上で衝突計算のために用いられているモノのことでして、背景以外は処理を軽くするために球体の組み合わせで構築しています。

 そこまでは一般的な3Dアクションゲームでも同じなのですが、『剣闘士GB』では防御に関して「ガードボタンを押していれば、ガード状態」というスイッチではなく「攻撃を受けた箇所に防具があるかないか」というシステムになっているのは御存知の通りかと思います。

 それにより…

 ・攻撃側とヤラレ側の位置と向き
 ・装備品の種類=長さ大きさ
 ・モーションによる姿勢=装備品の位置
 ・背景コリジョンの床の高さや壁との距離

 などの要因によって"コリジョン"の状況は多彩に変化します。

 ソバットのような素早い直突き系の技は、コリジョンの状況次第では複雑に折り重なった球体をいい具合にすり抜けるタイミングがあるため「~を抜けることがある技」とされていますが、基本は100%確実に安定して抜けることが無いように調整してあります(じゃないと防具システムが破綻してしまいます)。

 それ故に、盾を貫いて体を狙うスキルより、頭部や足を狙うスキルのほうが当てやすさでは勝ります(格闘スタイルであればハイキックやスライドローキックなどが使いやすいといえるでしょう)。

 でも「パリーをした後、これくらいの距離&角度で蹴り込むとフトコロにヒットしやすいな…」といったようにやり込むことで「抜け」の確度を上げることはできるかと思います。そこまで鍛錬して極めると敵のヤラレモーションをコントロールする楽しさが見えてくるかもしれません。

 このようなある意味でデジタルっぽくない感覚的な部分が、本作の特徴、魅力のひとつになっていると考えております。
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